ビクターのロゴマーク、犬のニッパーのお話。飼い主が先に亡くなった時のために

蓄音機に耳を傾ける犬のロゴマーク。誰もが一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?
じつは、ここに描かれている犬のニッパー君は実在していました。
今回は、このニッパー君の境遇を交えながら、飼い主がペットよりも先に亡くなってしまった場合について考えていきたいと思います。
ペットが一生安心して暮していくために、飼い主が出来ることは何か?
具体的な方法もご紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。

ニッパー君がビクターのロゴマークになった理由

 ビクターのロゴマーク、犬のニッパーのお話。飼い主が先に亡くなった時のために

犬のニッパー君と蓄音機

ニッパー君は、イギリスでマーク・H・バラウド氏という人に飼われていたフォックステリアで、とても賢い犬だったそうです。
残念ながらマーク・H・バラウド氏はニッパー君よりも先に亡くなったため、弟で画家のフランシス・バラウド氏に引き取られることになりました。
あるとき、フランシス・バラウド氏が家の蓄音機で生前の兄の声をかけると、ニッパー君は蓄音機の前で耳を傾けてじっと聞き入っていたそうです。
この様子に感動したフランシス・バラウド氏はその様子を絵画にし「His Master’s Voice」というタイトルにしました。

ビクターの親会社がロゴマークに

円盤式蓄音機の発明者であるベルリナー氏は「His Master’s Voice」の絵を見て心を打たれ、1900年に「米国ビクタートーキングマシーン」のロゴマークとして使用するために、商標登録しました。この会社は当時の「日本ビクター」の親会社です。
日本ビクターが日本で設立されたのは1927年ですから、ニッパー君は100年近くも日本で愛されている犬ということになりますね。

ニッパー君のように飼い主が先に亡くなったらペットはどうなる?

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親族・友人に引き取られる

ニッパー君は飼い主の弟に引き取られましたが、このように、まずは親族や近しい友人に飼える人がいないか探すのが一般的です。
不思議なもので、ペットは飼い主のきょうだいや同性の親には懐きやすいことがあります。じつのきょうだいや親、特に同性の場合は声や雰囲気などが似ているので、ペットも受け入れやすいのかもしれませんね。

保護団体に持ち込まれる

保護団体は、飼い主を失ったペットを引き取り、日常のお世話を行って新しい飼い主を探す活動をしています。
多くの団体が、ボランティアによって活動していますので、ペットを持ち込むときには、理由も合わせて良く相談する必要がありますよ。

保健所に持ち込まれる

保健所(動物保健センター)では、飼い主のいないペットを一時的に保護しています。収容から2日間は施設で保護しながらペットの情報を公示しますが、飼い主が現れないときは1週間程度で殺処分されます。
地域によっては保護動物用のシェルターを備え、殺処分を行わずに次の飼い主を探す活動を行っているところもありますが、殺処分している自治体が多いのも現実です。

猫は保護するのが難しい

猫は、人の出入りが多くなると、外に逃げ出してしまったり、押し入れの中や家具の裏などに隠れて出て来なかったりして、存在自体に気付かれないこともあります。
保護できても、新しい環境や人に慣れるまで時間がかかりますし、雑種の成猫は新しい飼い主が見つかりにくいと言った問題もあります。

発見が遅れることも

一人暮らしの飼い主が亡くなると、ペットにとっても非常に危険な状況になります。
発見が遅れると、餓死してしまうこともありますので注意が必要です。
また、飼い主が病院に搬送されたり緊急入院されたりした場合も、ペットの発見が遅れて命が危険にさらされてしまいます。

飼い主がもしもの時に備えてできること

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信頼できる人に依頼しておく

もしも自分に何かあったら、ペットを誰に託すか考えたことがありますか?
ニッパー君のようにきょうだいや家族が引き取ってくれたら良いのですが、じつは誰も引き取らず、保護団体や保健所に持ち込むというケースも少なくありません。
ペットを飼うなら、飼い主に万が一のことがあったとき、誰にお世話をお願いするのかを必ず考えておきましょう。直接その人と話して了承を得ておくのがポイントですよ。

ペット後見

超高齢化社会におけるペットの終生飼育を目指すために、岐阜県の団体が行っている互助会です。
飼い主が費用を遺すことによって、飼い主に何かあったときに団体がペットを預かり、飼育するしくみになっています。
ペットの新しい飼い主を探してくれたり、老犬ホームや老猫ホームでお世話してくれたり活動も行っているので安心ですね。
飼い主さんが亡くなってしまう場合だけでなく、入院や手術、障害などで飼えなくなった時にも対応してくれるようですよ。

ペット信託

飼い主が、信頼できる第三者に「自分が飼育できなくなった時に備えて、ペットの飼育費を管理し、その時が訪れたら飼育者または飼育施設に飼育費を支払う」ことを託し、契約を交わす制度です。
飼い主と契約を交わす人の間で、信託契約書を作成し公証役場で公正証書にしておきます。
公正証書をもとに、銀行で専用口座を開設してお金を預けておく、という仕組みになっています。
契約を交わす人が誠実に行動してくれることが大前提なので、信頼できる人を選ぶことが重要です。手続きの際は、行政書士に相談しましょう。

ペットの情報をまとめておく

飼い主以外の人がペットのお世話をするときのために、ペットの情報を残しておきましょう。
例えば、フードの名前、好き嫌い、アレルギー、かかりつけの動物病院、飲んでいる薬、トイレのタイミング、散歩の時間、怖がるものなど…。
飼い主さんしか知らないことがたくさんありますよね。
些細なことかもしれませんが、新しい飼い主さんとペットとのコミュニケーションのきっかけになったり、ペットが違う環境でも安心して暮らせる要素になったりすることもあります。
できるだけ細かく書いておくことをおすすめします。
細かく書き込めるタイプなら、市販されているエンディングノートやメモリアルノートを利用するのも良いですよ。

ペットを飼っていることを伝えよう

一人暮らしの飼い主の方は、お財布などの中に、「家にペットがいることを書いたカード」のを入れておくことをおすすめします。
緊急時にも、記載した人のもとに連絡がいきますので、ペットの命を守ることができますよ。
インターネットで検索すれば無料でダウンロードできるものもありますので、ぜひ試してみてくださいね。

ペットを飼う前に考えよう

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飼い主とペットの健康寿命のこと

介護の必要がなく、自立して健康的に日常生活を送れる期間を健康寿命と言います。
令和元年度の健康寿命は、男性が72.68歳、女性が75.38歳で、どちらも平均寿命と比べるとよりも10年程度短くなっています。つまり、程度の差はあっても約10年は何かしらの介護や介助が必要になる可能性が高いということです。
そしてもちろん、ペットにも健康寿命があります。
人の健康寿命を目安にすると、小・中型犬と猫は13歳前後、大型犬は9歳前後。もし60歳の人が小型犬を飼い始めたら、飼い主も犬も同じくらいの時期に介護や介助が必要な年齢を迎えてしまい、ペットを手放さないといけないということが起こってしまうかもしれません。
飼い主を失くすペットを増やさないために、冷静に考えることが大切ですね。

ペットの介護のこと

ペットに介護が必要になった場合、飼い主の体力的・精神的・金銭的な負担が大きく増えます。
ペットのデイサービスや、老犬・老猫ホームを利用して負担を軽減することもできますが、地域によっては充実していないところもありますし、利用するためには高額な費用がかかりますよ。
自宅の近くの施設やサービスについて、飼う前に調べておくことをおすすめします。
また、ブログやSNSなどで実際の介護生活を紹介している人もいます。介護の様子や高齢のペットの様子もわかるので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

ニッパー君が聞いているのは飼い主の声

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蓄音機に耳を傾けるニッパー君は、亡き飼い主の声を聞いていると言われています。
犬にとって大好きな飼い主を失うことは、それまでの暮らしと命そのものにかかわる危機と言えますよね。
愛するペットの命を一生守るため、飼い主が事前に出来ることはたくさんあります。
ペット後見やペット信託を利用すれば、安心がより確実になるでしょう。次にお世話する人とペットが困らないように、ペットの生活について詳しく書いておくのも大切です。
ペットを飼うなら、もしものときに引き取ってくれる人を見つけておきましょう。
また、ペットの健康寿命と介護について具体的に考え、飼い主として責任を全うできるか冷静に判断する事も必要です。
ペットの終生飼育に備えてあげられるのは、飼い主だけ。
愛するペットに、出来る限りの安心を残してあげたいですね。

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岩下ちくわ
大学の農学部で人と動物の関わりについて学び、現在は2匹の元保護犬と暮らす、動物が大好きなライター・ペット栄養管理士です。 犬や猫を初め、動物との暮らしに役立つ情報を、分かりやすくお伝えしていきます。
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