盲導犬サーブのお話

今から40年前、日本に勇敢な盲導犬がいたのをご存じでしょうか?
最近の日本ではめずらしい、ジャーマンシェパードの盲導犬サーブです。
今回は、サーブのお話とともに盲導犬についてもご紹介していきます。
人の活動をサポートする働く犬について、ぜひ知ってくださいね。

盲導犬ってどんな犬?

 盲導犬サーブのお話

盲導犬の仕事

盲導犬は、目の見えにくい人や見えない人が、安全に行きたい場所に行けるようにサポートします。
原則、飼い主の左側を歩きながら、道中の障害物を避けたり、交差点や段差で止まったりして、安全に歩行するために様々なことを判断し、対応しています。
盲導犬が道案内をするわけではなく、あくまでも飼い主の指示に従って行動しますので、道順や信号などの判断は、飼い主が行わなくてはなくてはいけません。

法律で定められた盲導犬

盲導犬は、身体障害者補助犬法で定められた、特別に訓練を受けた犬のことを言います。
この法律によって、補助犬(盲導犬、聴導犬、介助犬)を連れて、公共施設や交通機関、店舗などを利用することが認められています。
また、道路交通法にも規定されているため、視覚障害者の方が盲導犬を連れていれば、車は一旦停止や徐行をしなくてはなりません。

盲導犬の犬種

現在では、ラブラドールレトリバーが最も多くなっています。
ラブラドールレトリバーは、人と一緒に何かするのが好きなことや、明るい性格、利発さ、見た目の愛くるしさから選ばれることが多いようです。
以前は、ジャーマンシェパードもメジャーでしたが、日本では見た目に威圧感を持つ人が多いことなどから、近年では少なくなっています。
ただ、訓練には犬の性格も大きく影響しますので、ラブラドールレトリバーだからと言って、ずべての犬が盲導犬になれるわけではありません。
生まれた子犬のうち、盲導犬になれるのはおよそ3割と言われています。

盲導犬を支えるボランティア

盲導犬は、子犬を生む繁殖犬の飼育、子犬時期の飼育、キャリアチェンジ犬の飼育、リタイア犬の飼育など、そのライフステージを多くのボランティアが支えています。
盲導犬育成事業を行う団体では、これらのボランティアを募集していますので、多くの盲導犬を育てるために、出来ることからお手伝いしてみるのも良いですね。

盲導犬サーブのお話

 盲導犬サーブのお話

サーブってどんな犬?

サーブは、1977年に生まれた雌のジャーマンシェパードです。
現在では、ラブラドールレトリバーが多く見られますが、当時はジャーマンシェパードも主流だったようです。
中部盲導犬協会で訓練を受けて、岐阜県の男性のパートナーになりました。

飼い主を守ったサーブ

ところで、どうして盲導犬サーブは有名なのでしょうか?
それは、身を挺して飼い主を守ったというエピソードがあるからです。
1982年の冬、飼い主とともに国道を歩行していたところ、雪でスリップしたトラックがサーブと飼い主のところに突っ込んできました。
サーブは飼い主をトラックから遠ざけようと路肩の方に導き、その後、トラックに体当たりしたというのです。
なんと、飼い主は無傷だったと言います。
サーブは一命を取り留めましたが、この事故で左前足を切断することになり、盲導犬を引退しました。

盲導犬の認知につながった

盲導犬サーブの逸話は、多くの人の心を動かしました。
サーブが飼い主を命がけで守ったにもかかわらず、医療ケアに必要な費用が自賠責保険の適用外として支払われなかったことが問題となり、法改正されて「盲導犬は視覚障害者の体の一部」という見解が示されたのです。
また、多くのメディアや出版社がサーブのことを題材にしたため、盲導犬という存在自体も広く認知されることとなりました。

盲導犬サーブが眠る場所

 盲導犬サーブのお話

サーブは事故のあと盲導犬を引退し、中部盲導犬協会で余生を過ごしたようです。
1988年に老衰のため亡くなり、名古屋市の動物霊園で供養されています。
サーブのお墓には、今でも多くの人がお参りに来るそうです。
事故で3本脚になってしまった事も残念ですが、盲導犬を引退することになり、大好きだった飼い主さんと想定以上に別れることになったことも、どんなに寂しかったことでしょう。
盲導犬が、飼い主のもとで、安心して仕事に励める社会にしていきたいと願うばかりですね。

盲導犬サーブを称えて

日本とアメリカで受賞

1985年、サーブはアメリカのテキサス州知事に招待され、「テキサス名誉州犬」の称号を授かりました。また同じ年に、当時の首相から功労賞も授与されています。

アニメ放映やマンガ・書籍にも

盲導犬サーブのお話として、事故の翌年1983年に児童書「がんばれ!盲導犬サーブ(手島悠介氏著」が発行され、ベストセラーとなりました。
その後も漫画やアニメ、ドキュメントなどに取り上げられ、広く知られることとなりました。

盲導犬サーブの銅像

1986年、勇敢なサーブを称えて名古屋駅前に銅像が設置されました。このサーブ像には、交通安全への願いも込められていると言います。
その後、駅前開発によって2003年に久屋大通公園の栄バスターミナルに移設されました。
じつは有名なこのサーブ像以外に、もう2体存在するのをご存じでしょうか?
1体は岐阜県の健康福祉センターさつき苑に、もう1体は名古屋市にある盲導犬総合訓練センター正面に設置されています。
機会があればぜひ、その勇姿を見てみてくださいね。

白いハーネスは仕事中の証

 盲導犬サーブのお話
盲導犬は、仕事中、白色のハーネスを身に着けています。
仕事中は、飼い主の指示に合わせて状況を判断し、行動しています。
街中で盲導犬と飼い主を見かけたら、彼らにストレスを与えないような行動を心掛け、静観するようにしましょう。
車を運転していたら、一旦停止して通行を待ったり、ゆっくりと走ったりすることも大切です。
そして、もし飼い主が困っていたら「何かお手伝いしましょうか」と、声をかけてみるのも良いかもしれません。
不幸な事故を起こさないように、まずは自分にできることを実践していきたいですね。

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岩下ちくわ
大学の農学部で人と動物の関わりについて学び、現在は2匹の元保護犬と暮らす、動物が大好きなライター・ペット栄養管理士です。 犬や猫を初め、動物との暮らしに役立つ情報を、分かりやすくお伝えしていきます。
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